入笠高原の小さな山小屋、ヒュッテ入笠の山口です。
今日、11月に受験した『星空案内人(星のソムリエ)』最終試験の結果が届きました。メールには「合格」の文字があり、晴れて「星空案内人」となることができました。応援していただいたみなさん、ありがとうございました。
『星空案内人(星のソムリエ)』はお客様が興味をもって夜空を眺められるように、宇宙や星座の説明やお話ををする人です。星空案内人資格認定制度運営機構が全国各地に実施団体を認定し、その実施団体が資格認定講座を開講。その講座を受講し、試験に合格すると『星空案内人(星のソムリエ)』の資格取得となります。レストランでお客様の嗜好や料理との相性でワインを選ぶソムリエのように、お客様に合わせた星空観賞をエスコートし、ガイドする人といえばわかりやすいでしょうか。私はビクセン社で行われた資格認定講座を受講していました。
マナスル山荘本館のころからご宿泊の方を夕食後にナイトツアーズにご案内していました。標高1,800mの星空はそれは晴れれば見事な星空が広がります。そんな星空をお客様に伝えられればいいな、と思い始めたのですが・・・。
日本での年間降水日は平均すると116日(らしい)、おおよそ3日に1日は雨が降るという確率になります。降水確率は30%。地域差はありますが、毎晩晴れてきれいな星空が眺められるわけではないのですね。雨が降らなくても曇りの日もある。夏の山は特に湿度が高く雲が湧きやすいうえに、夜の時間も短い。ということで、中途半端な知識ではなかなかお客様を満足させるナイトツアーズを実施することができず、さらに雨の日は「今日は中止です」とお客様に伝えて終了という日もありました。
晴れた夜の星空を見上げてお話しても、星座や星の名前をお伝えしても反応はいまいちのことも多く、どうやってイベントとして組み立てたらいいか悩むときもありました。山のガイドの経験で案内することのポイントはわかっていても、明かりのない夜の闇の中で星を案内するというのはとても難しいことなのです。
実は、望遠鏡を使った観望会などに参加して勉強しようと出かけたことも数回あるのですが、どこもあまり面白くない。あれがペテルギウスで、あれがふたご座、あの星は何万光年かなたにあります。と伝えられても「ふーん」としか反応できない。知識としてお話しされているのだろうけど、身を乗り出して聞き入るということがなかったのです。
コロナ禍で営業がままならぬ日々が始まった2020年春、これからの営業スタイルを模索していろいろなスタイルを検索していた時に星空案内を独自なスタイルで実施している飲食店を見つけました。
その名は『星カフェSPICA』。
マスター「keisuke/スターリーテラー®︎」氏のオンラインイベントに参加し、星空の案内ってこんなに面白いのか!と驚くと同時に、このスタイルを自分のものにできないかとSNSをフォロー始めました。元吉本芸人であるkeisuke氏の話術は見事で、どんどん星の世界に引き込まれていきます。落としどころも満載、星のことはよくわからない人でも星の世界を楽しく過ごせる案内を実践している方でした。休館日に弾丸研修で大阪までkeisuke氏のお店を訪ねたこともありました。
それからは自分のネタを作ることと、星の話を組み立てることを常に考えるようになりました。落語や漫才の話し方、テレビやラジオのコメンテーターの伝え方も真似たり、ナイトツアーズで試してみたりといろいろやりましたよ。
そして、いつかはと考えていた星空案内人認定講座がビクセン社で開催されることになりすぐに申し込みました。昨年の12月ですね、冬のシーズンスタートの週末と重なったのですが、スタッフにお願いして受講することができました。
ナイトツアーズのネタ作りくらいに思って受講したのですが、興味深い内容の講義ばかりでした。特に「星空の文化に親しむ」という科目での暦、宇宙観、歴史を面白く受講しました。各科目受講後は筆記試験や実技試験もあり、泊まり込みでの受験勉強は久しぶりの緊張感をもって過ごせました。
ヒュッテ入笠にはビクセン社の天体望遠鏡があり、月、木星、土星が見られるときには設置してそれらの星を見てもらっています。それ以上に、いやナイトツアーズで一番大切にしていることは「自分の目で夜空を見上げてもらうこと」です。雲があっても、雪が積もってもナイトツアーズは実施しています。それは、この山で星空を体験すること、山の風の音、山の寒さ、日差しの強さ、夜の暗さ、水の冷たさなどと一緒の山の魅力の一つだからです。星が数個しか見えなくても、月が明るくても毎晩山の夜はやってきて、星も雲の上に現れます。月が明るくても星は見えます。そもそも月こそ見るべき一番身近な天体だとか思っています。特に満月の明るさや大きさはその存在感が、見ないことが申し訳ないくらいの力に包まれる感じがします。
「月が明るいから星が見えない」という方は少なくないですが、特に天文に多少興味を持っている人に多いのですが、月夜こそ夜空を見上げてください。また雲が広がった夜空でも動く雲のその隙間から見えた一つの星だけでも感動できる。そんなナイトツアーズを作り上げたいのです。
ヒュッテ前のお花畑に出かけ、寝転んで星空を見上げること。これが一番贅沢な星の楽しみ方でしょう。山の夜空を眺める楽しさと贅沢をお客様を味わっていただくことはヒュッテ入笠に滞在する魅力の一つです。星空案内人の山口がそれをエスコートいたします。雨の日や悪天候の夜は星座早見盤を使って夜の星の物語をお伝えしていますが、これも星空案内人認定講座での科目受講中に考えたプログラムです。
合格通知に少し興奮気味で書いてしまってハードルをかなり上げてしまいましたが、期待値以上のナイトツアーズをご提供できるように常に準備したいと思います。